2013年4月の記事一覧
2013年4月19日
ブラジルの子供たちが発見した伊勢神宮の心
松柏学園・大志万学院の生徒との座談交流会
1月19日、ブラジルから来日した松柏学園・大志万学院の
第19回訪日使節団(団員16名・14歳~16歳)が伊勢神宮を訪れた。
20年に一度、正宮や別宮などを造営し御装束神宝を新調して
神様に新しいお宮におうつりいただく式年遷宮が行われる本年、
私達まほろば教育事業団は、同じ「日本」というルーツを持つ
ブラジル日系人の中高生たちと私達日本の若者の共通の
心のふるさとである伊勢神宮の参拝を通じて、感動を分かち合い、
絆を深め、これからの互いの糧にしていきたいとの思いで、
座談交流会を開催した。
昨年末に来日した使節団一行は、明治神宮歳旦祭参列、皇居一般参賀、
靖国神社参拝、江田島での研修など、北海道から中国地方まで約50日間、
日本各地で研修に取り組んだ。(二月六日帰国)
引率の永実 上田 斎藤先生は、
「いつも伊勢神宮には必ずお参りすることにしています。
なぜかというと、まず子供たちに日本の神様は何なのか、
ということを感じてほしいからです。
大自然、全てが神様なんだということを理解してほしいからです。
生徒の中で、特に背の高い子はつい机に腰掛けたくなります。
いつも叱るのですが。一つ一つのものには命が宿っている、
自然全てのものは命があって、机を椅子にした場合、
机の命を私達が殺しているということをわかってほしいのです。
そうすれば全てのもの、自然そのものが命ですから、
お粗末にはできません。全てのものを大事に、
日本の方々のもったいないという精神、そのものにある命を大切にする
ということが一番大事なことです。全てのものを大事に扱うことができます。
そして、自然を通して私達が生かされているということを感じて欲しい。
それを感じるためには、全てのものに感謝のできる人になってほしい。」
と、伊勢神宮での研修にかける願いを語っていただいた。
19日早朝、使節団は五十鈴川で手を清めた後、伊勢神宮内宮を参拝。
参拝を終えて宇治橋を渡る頃、ようやく太陽が昇ってきた。
その後、式年遷宮を伝える「せんぐう館」の見学、外宮を参拝した。
上棟祭が行われた新しいお宮は白いテントが被さっていたが、
すでに新しい鳥居を拝することができる場所もある。
朝日が鳥居にふりそそぎ、鳥居がまばゆく輝いている神々しい。
座談会では、伊勢神宮を参拝しての感動や発見をお互いに語り合った。
キリスト教社会で育った使節団にとって、ご神域の清浄な世界は
初めての体験である。日本人が大切にしてきた心を求めてきた彼らにとって、
伊勢神宮は様々な発見と感動を与えるものだった。
「伊勢神宮に行ったのは朝6時で、そんなにいっぱいの人がいませんでした。
私達以外の人はあまりいなかったので、もっと「綺麗」と感じました。
そして、風の神様とかのお宮を見て、神様はお宮の中にいるという感じが
しました。」
(ウィリアン 裕貴 名和君 15歳)
「伊勢神宮に入った時に、何か違う、とても特別な雰囲気でした。
まるで昔に帰ったような感じがしました。伊勢神宮は日本の歴史を象徴、
代表する存在だと思います。」
(ウィリアン 恵一 小川 丸藤君 15歳)
「お祈りすることによって目に見えないけれど、
ものすごい希望を感じました。お参りする前に、
五十鈴川で手を清めましたが、気持ちを込めると自分が清らかな
気持ちになれました。最初お参りした時はまだ暗くて静かで、
周りがよく見えなかったけれど、後からもう一度お参りしたときは
周りは明るくなっていて、同じ所ですが、明かりがあることによって
「生きている」ということを感じました。明かりは天照大御神の光で、
それが生きているという感じが強かったです。」
(マリア パウラ アントナシオさん 15歳)
「伊勢神宮を参拝して、宇治橋に着いた時、お日様が出てきました。
太陽がどこへ行っても見れるけど、その時の太陽はただの太陽ではなく、
天照大御神さまが出てきたような感じがしました。」
(ルイザ 真由実 片岡さん 14歳)
カトリック教の子供達が伊勢神宮の神聖な雰囲気に包まれる中で、
自ずと自然の中に神様の存在を実感したことが伝わって来た。
式年遷宮について感想を語ってくれる団員もいた。
「伊勢神宮に行った時、自然がみんな豊かでした。
寒かったけれど、時々気持ちいい風が吹いていました。
伊勢神宮が式年遷宮によって今まで続いてきたことは
日本にしかないことだと思います。」
(ルカス 憧造 半沢君 15歳)
「伊勢神宮の建て方、建築そのもののことですが、
どうやって何千年前の人がああいう本当に今でもすごいと思う建て方を
ずっと次へと受け継がれてきたものか、どうやってあれだけのものを
考え出すことが、大きいものが建てられたのか、出来たのか
、すごいと思います。」
(ニコラス 馨 高野 千葉君 14歳)
このように、千何百年もの昔と同じものを受け継いで来た日本の心に触れて
驚きと感動を表す生徒もいた。
ブラジルの生徒の意見を受けて、
小林奈々佳さん(まほろば教育事業団・高校生友の会「呉竹」リーダー、高校3年)は、
「宇治橋で太陽が出てきた時、天照大御神さまを感じたという
ルイザさんの意見にすごく共感しました。私達が参拝した時、
宇治橋に霜がおりていて、太陽の光が霜に反射してキラキラと光っていて
感動しました。天照大御神様を感じることができるというのは、
同じ血が流れているだんなということを感じてすごくうれしかったです。」
と感想を語り、感動を共有することが出来た。
また、式年遷宮について分かりやすく伝えようと、
高校生がパワーポイントを使って発表を行い、
ブラジルの生徒たちも真剣に耳を傾けた。
座談会の最後に斎藤先生は、
「私は、二年前の東日本大震災のことを言うたびに心が痛いのですが、
ブラジルではテレビやニュースで見た日本のみなさまの姿、行動、
どんなに苦しい中でも相手のことを思いやる気持ち、
本当に苦しいのにまだ感謝ができるその心、それを見て本当に私達、
子供達もそうだと思いますが、自分達が日系ブラジル人で、
私達の祖先に日本の方々が祖先だということにすごく誇りを持っています。
私達もブラジル人として私達が受け継いだ大事なことを
自分たちの生活の中で、家族の中で、町の中で、自分達の国の中で
忘れずに生きていかなければならないということです。
日本の方々にはずっとお願いしたいことですが、
私達も頑張ってブラジルを護っていきたいと思います。
日本の方々も私達が祖先に誇りを思えるような国をずっと
つくっていらっしゃってください。そうすればきっとお互いに尊敬しあって、
本当の平和な地球をまもっていける人間になれると信じています。」
と涙ながらに語られた。
小林さんは次のように感想を記した。
「神宮のお祭りで、日別朝夕大御饌祭という一日に二回、
神様にお食事をさし上げるお祭りは、お食事を作る際に
ガスコンロなどではなく、火鑚杵という道具で火をおこすそうです。
そして、千数百年もの長い間、一日も欠かすことなく続けられてきました。
ということは戦争などのどんなに大変な時でも行われてきたということに
なります。これだけの歴史があるお祭りは私達もしっかり受け継ぎ、
そして次の世代にも伝えていかなければなりません。
そう考えると、私達は、これからも続いていくであろう歴史の中で
大切な中継地点に立っているんだと思います。
世界に誇れる文化を守り継いでいく責任があるのです。
「真の国際人」…外国の方とのコミュニケーションができるだけではなく、
自らの国のことを良く知り、自信を持ってお互いの国の良さを伝えることが
出来る事が私達に必要だと感じました。」
伊勢神宮が心のふるさとと言われるのは、
日々のお祭りと式年遷宮を通じて、自然のいのちを生かし、
感謝の心を常に表し続けてきた日本人の最も大切な心の原点が
あるからだということを、ブラジルの子供達と発見できた
かけがえのない時間となった。
同じルーツを持つ「祖国日本」に生きる私達こそ、
式年遷宮が行われる本年、伊勢神宮の尊い精神を蘇らせ、
清く明るく、日本の国の将来を担う若者が増えていくように、
今夏、伊勢で開催される夏季中高生セミナーに心を込めて参りたい。
written by 前田多恵子