ホーム教育通信中高生の皆さんへ「10代に読みたい物語」復興を支えた神楽の心に迫る奉仕活動⑤
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2013年7月3日

復興を支えた神楽の心に迫る奉仕活動⑤

■復興と式年遷宮
この日の朝、私は、仮設住宅からおだやかな海を眺めた。
岬の先から差し昇る朝日を受けて、漁師達が、黙々と漁に勤しむ姿が見えた。静かさの中に澄み切った充実感が満ちていた。
いかに震災にうちひしがれても、こつこつと努力を重ねる漁師たちに、
海はふたたび恵みをもたらしてくれる。
まぶしく降り注ぐ朝日に照らされ、かつての美しい雄勝の様がふっと浮かんできた。
屋号の上に、ひるがえる「日の丸」は、天上界の神、天照大御神であると、末永氏は、憧れをこめて教えて下さった。

「天岩戸開き」の神話は、どんなに暗闇にあろうとも、みなの幸せを願い、分を尽くし、助け合っていけば、ふたたび希望という光が蘇ることを教えている。
折々に「岩戸開き」を演じてきた神楽師にとって、神話の物語は、心にくっきり刻まれているに違いない。
そして、それは、折々によみがえり励みとなり智恵となって、浜の人々を導いているのではないかと思う。
今回の体験を通じて、便利で、裕福でありながら、無機的に日々を過ごしがちな都会の生活と、
不便でも、自然に育まれ、神の声に耳を澄ましながら生きる人々のどちらが満ち足りた幸福感を味わっているのだろうかと、改めて問い直している。
二者択一はできないものの、村田参事が、震災を通じて学ぶべきは、本質においては、文明と自然の折り合いをどのようにつけていくかである、
とのご指摘が思い返される。
厳しくも恵み豊かな自然の中で、神楽を通して神々の声に耳を澄ましつつ、たくましく生き抜く雄勝の人々に、私達が支援どころか、逆に多くの気付きを与えて頂いている。
  
■体験を誓いにして
逆境をはねのけ再び復活す雄勝の漁師我は忘れじ 
私自身本当に変わり成長し私の生涯この場と共に

参加した高校生らは、様々な形で、自らの生き方を見つめ問い直した。
多くの小学生を失った大川小学校で黙祷を捧げ、ある学生は、
「これからの被災地の復興へ向けて何かしらの貢献をしていくことが、彼らの無念を晴らすことになり、残された人々を明るくすることが出来ると信じてこれからも頑張っていきたいです」
と述べ、ある学生は、入学した大学で、東北の震災を風化させないために語っていきたいと誓いを固めた。

それぞれの体験に共通するものは、どんなに困難にあっても前を向いて生きようとしている人々の美しさであった。
小さな仮設住宅に、三人も女性を泊めて下さったり、浜から取り立てのホタテや牡蠣をご馳走して下さった青木さん。

いつか家を建てたあかつきには、清水の湧く家の一部屋を十名ほど泊まれる大部屋にして、皆さんの憩いの場にしてもらいたいと、夢を語られた。
これから様々な課題を乗り越えていかなければならない。
そのとき、私達は、皇太子殿下のお言葉のように心を一つにして支えていける者でありたい。
そして、雄勝の人々に気付かせていただいた大切な生き方を、これからの日本に伝え、体現していける自分たちになりたいと心から誓っていった。

おわり

written by 清家和弥

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